相続、遺産分割については、
1 相続人は誰か、法定相続分はどうなるか
2 遺産として何があるか
3 遺言書はあるか
4 遺言書がない場合にどのようにして遺産分割を行うか
という視点で整理すると分かりやすいと思います。
そこで、この順番に沿って説明いたします。
①被相続人に配偶者がいない場合と、②配偶者がいる場合に分けてご説明いたします。
子→親→兄弟姉妹の順番で相続人になります。
そのため、子がいる場合には、親は相続人にはなりません。
子が相続人になる場合、子が複数いる場合には、子の人数に応じて均等に分けることになります。
親、兄弟姉妹についても同様です。
パターン | 相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
1 | 子 | 子が全て相続します |
2 | 親 | 親が全て相続します |
3 | 兄弟姉妹 | 兄弟姉妹が全て相続します |
【具体例1】(パターン1の場合)
相続人が、子3人(長男、二男、長女)の場合
子(長男):3分の1
子(二男):3分の1
子(長女):3分の1
【具体例2】(パターン2の場合)
相続人が、親2人(父、母)の場合
親(父):2分の1
親(母):2分の1
【具体例3】(パターン3の場合)
相続人が、兄弟姉妹4人の場合
兄:4分の1
弟:4分の1
姉:4分の1
妹:4分の1
被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者は必ず相続人になります。
また、配偶者以外の他の相続人は、子→親→兄弟姉妹の順番で相続人になります。
そのため、子がいる場合には、親は相続人にはなりません。
子が相続人になる場合、子が複数いる場合には、子の人数に応じて均等に分けることになります。
親、兄弟姉妹についても同様です。
パターン |
配偶者 |
他の相続人 |
---|---|---|
1 |
配偶者 |
子 |
2 |
配偶者 |
親 |
3 |
配偶者 |
兄弟姉妹 |
4 |
配偶者 |
なし |
【具体例1】(パターン1の場合)
相続人が、配偶者と子3人(長男、二男、長女)の場合
配偶者 :2分の1
子(長男):6分の1(1/2×1/3)
子(二男):6分の1(1/2×1/3)
子(長女):6分の1(1/2×1/3)
【具体例2】(パターン2の場合)
相続人が、配偶者と親2人(父、母)の場合
配偶者 :3分の2
親(父):6分の1(1/3×1/2)
親(母):6分の1(1/3×1/2)
【具体例3】(パターン3の場合)
相続人が、配偶者と兄弟姉妹4人の場合
配偶者:4分の3
兄 :16分の1(1/4×1/4)
弟 :16分の1(1/4×1/4)
姉 :16分の1(1/4×1/4)
妹 :16分の1(1/4×1/4)
代襲相続とは、相続人となる者が相続開始以前に死亡などにより相続権を失った場合に、その相続人の子などが代わりに相続することをいいます。
代襲相続は、㋐子について代襲相続が生じる場合と、㋑兄弟姉妹について代襲相続が生じる場合があります。
具体的には次のとおりです。
被相続人A ― 子B ― 孫C
被相続人Aが亡くなる前に、被相続人の子Bが既に亡くなっていた場合でも、Bの子であるC(被相続人の孫)がいる場合には、Bの代わりにCが相続人となります。
なお、代襲相続が生じる場合、子Bに配偶者Wがいたとしても、WはBの代わりに相続人とはなることはありません。
Cも既に亡くなっていて、さらにCの子D(被相続人のひ孫)がいる場合には、再代襲相続としてDが相続人となります。
兄弟姉妹が相続人になる場合にも代襲相続は生じます。
被相続人A
弟e ― 子f
被相続人Aの弟eが相続人になる場合、被相続人Aが亡くなる前に、弟eが既に亡くなっていた場合でも、eの子であるfがいる場合には、eの代わりにfが相続人となります。
もっとも、兄弟姉妹の場合には再代襲相続はありませんので、注意が必要です。
例えば、fも既に亡くなっていて、さらにfの子であるgがいる場合でも、gは相続人にはなりません。
代襲相続とは異なるものとして、数次相続といわれる状況があります。
数次相続とは、被相続人が亡くなって相続が発生したものの、遺産分割を行わないうちにその相続人が亡くなってさらに次の相続が生じた場合のように、複数の相続が同時に問題となっている状況のことです。
具体的には次のとおりです。
一次相続 被相続人A ― 子B
二次相続 子B ― Bの妻W・子C
被相続人Aが亡くなった場合、子Bが相続人となります(一次相続)。
その後、子Bが亡くなった場合には、被相続人をBとする相続について、Bの妻であるWと子であるCが相続することになります(二次相続)。
その結果、Aの遺産の一部について、Bの妻であるWにも相続権が発生することになります。
代襲相続と異なるのは、代襲相続は被相続人Aよりも先に子Bが亡くなっている場合であるため、被相続人Aの相続について、子Bの代わりに孫であるCが直接相続人となるのに対して、数次相続の場合は、被相続人Aが亡くなった時点では子Bが生きているため、被相続人Aの相続については通常通り子Bが相続人となっているという点です。
相続人を確定するためには、戸籍謄本などを取り寄せて相続関係を確認する必要がありますが、その際には、次のような点がないか確認する必要があります。
子が相続人となる場合、次の点について確認する必要があります。
親が相続人となる場合、次の点について確認する必要があります。
兄弟姉妹が相続人となる場合、次の点について確認する必要があります。
遺産分割で問題となる遺産としては、次の財産があります。
土地、建物、マンション、地上権、借地権(賃借権)など。
土地、建物、マンションの評価額を確認する最も簡単な方法は、毎年4月か5月頃に送られてくる固定資産税納税通知書に各不動産の評価額が記載されていますので、その金額を参照する方法だと思います。
預貯金の金額は、通帳を確認したり、銀行に残高証明書などを発行してもらって確認します。
預貯金については、銀行などの金融機関が被相続人が亡くなったことを把握した場合、その口座を凍結することが一般的です。
この場合、その口座に預けてある預貯金の払戻しを受けるためには、遺産分割協議書+印鑑証明書や、相続人全員が実印で押印した同意書+印鑑証明書などが必要となります。
被相続人が契約者となっている保険については、その保険金や解約返戻金が相続の対象となる場合があります。
ただし、保険金の受取人として、被相続人以外の者(配偶者や子など)が指定されている場合には、その受取人が固有の権利として保険金請求権を取得するため、遺産分割の対象にはなりません。
保険金の額については、保険証券を見て確認します。
保険の解約返戻金が発生するかどうか、発生する場合の金額については、保険証券に記載されている場合の他、保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。
現金については、その金額に加えて、誰がどのように管理しているのか、確認しておく必要があります。
動産とは、不動産以外の物のことです。
一般的には、財産的価値のある貴金属、時計、家財道具、着物などが問題となります。
貸金債権、損害賠償請求権などの債権も遺産分割の対象となります。
株式、投資信託、社債、国債などがあります。
株式や投資信託については、証券会社が発行する資料などにより、銘柄や株式数を確認することが考えられます。
また、株価は日々変動するため、直近の株価を、インターネットや証券会社が発行する最新の資料などにより確認することが考えられます。
信用金庫や協同組合などの出資金などがあります。
借金、保証債務などの債務は、相続の発生により、各相続人に法定相続分で当然に承継されます。
そのため、遺産分割の対象にはなりません。
債務の承継を免れる方法としては、裁判所に相続放棄の申述をする方法があります。
遺言書がある場合には、通常、その遺言書の内容にしたがって相続が行われることになります。
そのため、遺産分割を行う前に、まずは遺言書がないか確認しておく必要があります。
遺言書には、大きく分けて、①自筆証書遺言と、②公正証書遺言がありますので、それぞれ説明いたします。
自筆証書遺言とは、被相続人が自ら手書きで書いた遺言書のことです。
自筆証書遺言の存在については、被相続人から生前にその存在を聞いていた者がいる場合や、被相続人の自宅などから発見されたような場合に明らかになることが多いと思います。
また、遺言書の保管者または発見者は、遺言者が死亡した後、その遺言書を家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければならないことになっています。検認とは、相続人に遺言書の存在、内容を知らせるとともに、遺言書の形状や内容などを確認する手続のことです。そのため、検認の請求があると、裁判所から通知がくるため、自筆証書遺言が存在することが分かることになります。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人により作成された遺言書のことです。
公証役場に公正証書遺言が保管されているかどうかは、被相続人が亡くなった後、相続人などの利害関係人が、必要書類を用意して公証役場に問い合わせれば、無料で教えてもらえます。
公証役場は、遺言情報管理システムで、全国の公証役場で作成した遺言書を管理していますので、問い合わせる公証役場はどの公証役場でも構いません。
必要書類は次のとおりです。
遺産分割は、通常、遺産分割協議(話合い)→遺産分割調停→遺産分割審判という流れで手続が進んでいくことになります。
相続人間で遺産分割の話合いを行います。
裁判所で行う話合いです。
相続人間で合意することが難しい場合、証拠に基づいて裁判官が判断します。
遺産分割協議においては、次のような点を考慮することが考えられます。
遺産分割協議においては、まずは、各遺産の評価額がどの程度あるのかを整理していくことが考えられます。
遺産の評価額を整理した上で、その遺産を、法定相続分に応じて分配するのか、それとも法定相続分とは異なる割合で分配するのかを決める必要があります。
相続人の中に被相続人から生前贈与を受けている者がいる場合には、相続人間の公平を図るために、遺産分割により取得する金額を減らすことが可能です。このような被相続人から特別に受けた利益のことを特別受益といいます。
逆に、相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした者がいる場合には、相続人間の公平を図るために、遺産分割により取得する金額を増やすことが可能です。このような特別の貢献のことを寄与分といいます。
遺産の中に不動産がある場合には、その不動産を相続人の誰かが取得するのか、それとも売却するのか等を決める必要があります。
相続人の一人が不動産を取得するような場合には、その相続人が不動産の評価額分の遺産を取得したものと考えられます。
これに対して、不動産を相続人全員で売却するような場合には、まずは不動産の登記名義を、被相続人から相続人全員の名義に変える必要があります(これを相続登記といいます)。
その後、相続人全員の名義で不動産を売却し、売却代金を法定相続分に応じて分けることなどが考えられます。
遺産分割協議が整った場合には、遺産分割協議書を作成し、全員連名で署名押印をします。
押印については、銀行で預貯金の払戻しを受けたり、不動産の登記名義を変更したりするためには、実印で押印し、印鑑証明書を添付することが求められます。
また、遺産分割協議書とは少し異なるものとして、遺産分割協議証明書というものがあります。
この遺産分割協議証明書とは、各相続人が、遺産分割協議が成立したこととその内容を証明するという書類です。
全員連名で作成するのではなく、各相続人が1人ずつ作成するものであるため、相続人全員で集まることが難しく、郵送でやり取りするような場合に、同時に準備を進めることが可能です。
話合いにより遺産分割を行うことが困難な場合、遺産分割調停として、裁判所で遺産分割の話合いを行うことが考えられます。
遺産分割調停は、調停委員を通じて交互に話合いを行う手続であるため、相手当事者とは直接顔を合わせることなく話合いを行うことが可能です。
遺産分割調停によっても合意に至らなかった場合、遺産分割審判として、通常の訴訟と同じように、裁判官が証拠に基づき遺産分割を行います。
弁護士費用につきましては、下記の当事務所のホームページをご参照ください。